【第048話】受け入れ難き現実
2026/10/03
炎流と水流がぶつかると同時に来栖と倉田は走りだす。
来栖はすかさず、次の炎流を倉田の前方へ向けて放つ。
倉田も水流に乗って炎をかわし、その勢いで来栖へ突っ込んでいく。
倉田が床に降り立ち、振り返ると、黒鉄のドームができ上がっている。
(シェルターで水没を防いだか)
黒鉄が赤みを増し、壁が爆散し、炎を帯びた溶鉄の塊が四方に飛び散る。
倉田は避けつつ、水流をぶつけていく。
炎は消えるが、鉄塊の勢いは止まらない。
(なるほど、相性の悪さを質量と勢いでカバーする。だが……)
倉田は両腕を大きく広げ、力いっぱい掌を合わせる。
巨大な水流が大波となって、来栖へ押し寄せる。
鉄塊は勢いを失い水中へと沈んでいく。
大波はそのまま来栖に襲いかかる。
波の量と速さに防御が間に合わず、水流が来栖に直撃する。
倉田は手を緩めず、即座に凍らせていく。
濃い冷気が辺りを包み込んでいく。
しばらく様子をうかがっていたが、来栖は動かない。
倉田は警戒を解かないまま、足音を響かせて近づいていく。
凍っているが、来栖の瞳がわずかに動いた。
倉田をにらんでいるように見える。
彼は構わず、さらに近づいた。
「さらばだ、鋼の狼。相性が悪かったな」
倉田は来栖とすれ違いざまに何かを呟き、冷気の闇の中へ姿を消した。
*
「何ですって!?」
かおりが声を上げると、結月もそちらを見る。
いつもは落ち着いているかおりから余裕が消えている。
結月の視線に気づいたのか、かおりは口元を手で覆い、背を向ける。
「そんなこと……ええ……ええ……分かった」
電話を切ると、口元を当て、一心に何かを思案している。
やがて目を閉じ、覚悟を決めたように開く。
「結月ちゃん、出かけるわよ」
かおりはテーブルの上に置かれたバッグに手をかける。
「何かあったんですか?」
結月が心配そうに尋ねるが、答える前に、かおりは結月の手を引き、歩み出す。
「あなたのお父さんのことよ」
結月から表情がなくなる。
「考えてる時間はない、とにかく行くわよ」
一階に降りると藍が出てくる。
「どうしたの?」
「警部が救急搬送された。重傷で意識がないらしい。結月ちゃんを連れてくから、後は頼むわ」
藍はうなずくと、結月の冷たい手を取り、両手でギュッと包み込んだ。
「大丈夫。あの堅物は、こんなことでくたばったりしない。でしょ?」
藍がかおりに問いかけると、かおりも大きくうなずいた。
