【第049話】朝霧の盲点
2026/10/10
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倉田が倉庫を出るとエリックが拍手をしながら現れる。
「いやはや、すごい戦いでした。こんな素晴らしい能力をお持ちだったんですね」
「……別に見せびらかすようなものではない」
倉田は淡々と答える。
「まさか、憎き警察のエースを、こうも簡単にほふれるとは。もっと早く教えてくれたら、計画はもっと違ったものになっていたでしょうに」
エリックは語気を強める。
「カードはいざという時まで取っておくべきです。それに、派手なドンパチを最初からやっていたら、今回の計画は上手くいかない。そうではありませんか?」
「……」
遠くでサイレンの音が聞こえる。
「あなたも早くここを離れた方がいい」
エリックは黙って倉田を見つめている。
「心配には及びません。四日後には、予定通り、流通が開始されます。そう遠くない内に、ご期待の展開が訪れるでしょう」
倉田はそう言って車に乗り込むと、朝霧が立ち込めた倉庫街へ走り去っていった。
「……食えない男ですね。まあ、鋼の狼を葬ったことに免じて大目に見ましょう」
彼の足元から紫色の光の渦が立ち上がる。
「精々、最後まで踊ってもらいますよ。あなたのダイスは私たちが持っているのですから」
光に包まれたエリックは笑い声と共に消えていった。
*
しばらく走ると、倉田は大きく息を吐き出し、座席にもたれかかる。
「大丈夫ですか? 顔が真っ青だ」
ハンドルを握る部下が心配そうに声をかける。
「出し惜しみができる相手じゃなかったからな」
倉田はネクタイを緩めながら、呼吸を整える。
「逃げ切れそうか?」
「追っては来てないので、多分、行けます」
「よし」
彼はポケットから携帯を取り出し、電話をかける。
「ああ、俺だ。ブツはどうなってる?」
倉田は電話越しの報告に耳を傾ける。
「分かった。最近使ってきた倉庫は先方にバレている可能性がある……ああ……一ヶ所、五年ぐらい使ってなかった場所があるだろ? そこへ移そう……大丈夫だ。だからこそ、盲点になる……ああ、よろしく頼む」
電話を切ると、ビルの隙間から朝陽が差し込んでくる。
「拠点を移す。中央四丁目の倉庫は覚えてるか?」
「ええ!? あんな所にするんですか? 何かあったら一溜まりもありませんよ?」
部下も動揺を隠せない。
「でも、あんな場所で悪さをしようなんて、誰も思わないだろ?」
「それは……」
倉田は煙草に火を点け、煙を力いっぱい吐き出す。
「勝負だ、鋼の狼、そして、ノクスエテルヌム」
