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【長編小説】君の闇、光へと通ず ~現代異能探偵青春譚~

【第049話】朝霧の盲点

*

倉田が倉庫を出るとエリックが拍手をしながら現れる。

「いやはや、すごい戦いでした。こんな素晴らしい能力をお持ちだったんですね」

「……別に見せびらかすようなものではない」

倉田は淡々と答える。

「まさか、憎き警察のエースを、こうも簡単にほふれるとは。もっと早く教えてくれたら、計画はもっと違ったものになっていたでしょうに」

エリックは語気を強める。

「カードはいざという時まで取っておくべきです。それに、派手なドンパチを最初からやっていたら、今回の計画は上手くいかない。そうではありませんか?」

「……」

遠くでサイレンの音が聞こえる。

「あなたも早くここを離れた方がいい」

エリックは黙って倉田を見つめている。

「心配には及びません。四日後には、予定通り、流通が開始されます。そう遠くない内に、ご期待の展開が訪れるでしょう」

倉田はそう言って車に乗り込むと、朝霧が立ち込めた倉庫街へ走り去っていった。

「……食えない男ですね。まあ、鋼の狼を葬ったことに免じて大目に見ましょう」

彼の足元から紫色の光の渦が立ち上がる。

「精々、最後まで踊ってもらいますよ。あなたのダイスは私たちが持っているのですから」

光に包まれたエリックは笑い声と共に消えていった。

*

しばらく走ると、倉田は大きく息を吐き出し、座席にもたれかかる。

「大丈夫ですか? 顔が真っ青だ」

ハンドルを握る部下が心配そうに声をかける。

「出し惜しみができる相手じゃなかったからな」

倉田はネクタイを緩めながら、呼吸を整える。

「逃げ切れそうか?」

「追っては来てないので、多分、行けます」

「よし」

彼はポケットから携帯を取り出し、電話をかける。

「ああ、俺だ。ブツはどうなってる?」

倉田は電話越しの報告に耳を傾ける。

「分かった。最近使ってきた倉庫は先方にバレている可能性がある……ああ……一ヶ所、五年ぐらい使ってなかった場所があるだろ? そこへ移そう……大丈夫だ。だからこそ、盲点になる……ああ、よろしく頼む」

電話を切ると、ビルの隙間から朝陽が差し込んでくる。

「拠点を移す。中央四丁目の倉庫は覚えてるか?」

「ええ!? あんな所にするんですか? 何かあったら一溜まりもありませんよ?」

部下も動揺を隠せない。

「でも、あんな場所で悪さをしようなんて、誰も思わないだろ?」

「それは……」

倉田は煙草に火を点け、煙を力いっぱい吐き出す。

「勝負だ、鋼の狼、そして、ノクスエテルヌム」

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