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【長編小説】君の闇、光へと通ず ~現代異能探偵青春譚~

【第050話】家族の温もり

*

目を開けると、薄暗い天井が広がっていく。
腕で踏ん張りながら、きしむ身体を持ち上げる。

起き上がると月明かりに照らされた部屋が浮かび上がる。
静かに息を吐き出すと、どこからか寝息が聞こえる。

視線を落とすと結月がベッドにもたれかかる様に眠っていた。

「……」

ふと、結月の頭へ手が伸びるが、思い直し、引っ込める。

枕元のチェストの上に置かれたデジタル時計に目を向ける。

(今日だったな)

慎は静かに目を閉じるが、ハッと何かを思い出す。
もう一度、時計を見る。

彼は表情を引き締め、窓と扉に目をやる。
そして、愛娘の寝顔を見つめる。

(すまん、結月)

*

「ゆづ!」

ゆかりが結月に駆け寄る。
ベッドに目を向けると慎の姿はなかった。

ゆかりはベッドの布団に手を当てる。

(冷たい……夜中の内か)

さらに、その周囲をじっくりと見回し手がかりを探す。

「ゆかりさん」

結月の方を向くと、彼女は一枚のメモ用紙を差し出した。

“今日が最後の機会、戦闘準備の上、乗り込むべし”

その下には住所のようなものも書かれている。

「すみません……」

結月は拳をギュッと握りしめ、うつむいている。
ゆかりは首を横に振る。

「お前のせいじゃない……たくっ、あのおっさんは!」

ゆかりは結月を抱きしめる。

「大丈夫だ、お前の親父はあたしたちが何とかする」

ゆかりは電話を取り出した。

*

藍が到着すると、ゆかりは足早に部屋を出ていった。

「一度戻りましょ」

藍が肩に手を回し投げかけると結月もうなずき歩き出す。

(お父さんなら、絶対に)

結月は胸の前で拳を抱く。

「あの……」

立ち止まり、藍は結月の方に向き直る。

「一ヶ所、寄り道してもらえませんか?」

*

墓前には真新しい花が供えられている。
きれいに掃除され、線香の燃えた痕もある。

「……」

一つの墓の前にたたずむ結月を藍はじっと見守っている。

そこには“来栖家ノ墓”と彫られている。

「そっか、今日は……」

藍の静かなつぶやきに結月は墓石を見つめたまま答える。

「はい、お母さん……母の命日です」

穏やかな風が二人の間を流れていく。

「毎年この日に祖母と来ると、必ず先に花が上げられています」

藍は神妙な面持ちで結月を見つめる。

「私は母の面影を知りません。父も小さい頃のおぼろげな記憶だけでした」

結月は供えられた花をそっとなでる。

そして、静かに深く手を合わせた。

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