【第050話】家族の温もり
2026/10/17
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目を開けると、薄暗い天井が広がっていく。
腕で踏ん張りながら、きしむ身体を持ち上げる。
起き上がると月明かりに照らされた部屋が浮かび上がる。
静かに息を吐き出すと、どこからか寝息が聞こえる。
視線を落とすと結月がベッドにもたれかかる様に眠っていた。
「……」
ふと、結月の頭へ手が伸びるが、思い直し、引っ込める。
枕元のチェストの上に置かれたデジタル時計に目を向ける。
(今日だったな)
慎は静かに目を閉じるが、ハッと何かを思い出す。
もう一度、時計を見る。
彼は表情を引き締め、窓と扉に目をやる。
そして、愛娘の寝顔を見つめる。
(すまん、結月)
*
「ゆづ!」
ゆかりが結月に駆け寄る。
ベッドに目を向けると慎の姿はなかった。
ゆかりはベッドの布団に手を当てる。
(冷たい……夜中の内か)
さらに、その周囲をじっくりと見回し手がかりを探す。
「ゆかりさん」
結月の方を向くと、彼女は一枚のメモ用紙を差し出した。
“今日が最後の機会、戦闘準備の上、乗り込むべし”
その下には住所のようなものも書かれている。
「すみません……」
結月は拳をギュッと握りしめ、うつむいている。
ゆかりは首を横に振る。
「お前のせいじゃない……たくっ、あのおっさんは!」
ゆかりは結月を抱きしめる。
「大丈夫だ、お前の親父はあたしたちが何とかする」
ゆかりは電話を取り出した。
*
藍が到着すると、ゆかりは足早に部屋を出ていった。
「一度戻りましょ」
藍が肩に手を回し投げかけると結月もうなずき歩き出す。
(お父さんなら、絶対に)
結月は胸の前で拳を抱く。
「あの……」
立ち止まり、藍は結月の方に向き直る。
「一ヶ所、寄り道してもらえませんか?」
*
墓前には真新しい花が供えられている。
きれいに掃除され、線香の燃えた痕もある。
「……」
一つの墓の前にたたずむ結月を藍はじっと見守っている。
そこには“来栖家ノ墓”と彫られている。
「そっか、今日は……」
藍の静かなつぶやきに結月は墓石を見つめたまま答える。
「はい、お母さん……母の命日です」
穏やかな風が二人の間を流れていく。
「毎年この日に祖母と来ると、必ず先に花が上げられています」
藍は神妙な面持ちで結月を見つめる。
「私は母の面影を知りません。父も小さい頃のおぼろげな記憶だけでした」
結月は供えられた花をそっとなでる。
そして、静かに深く手を合わせた。
