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【長編小説】君の闇、光へと通ず ~現代異能探偵青春譚~

【第039話】理守として

*

助手席の短髪男は仏頂面で夜の街並みを見つめている。

(心ここにあらずという感じだな)

目の前の信号が赤になり、車がゆっくりと止まる。
その瞬間に携帯の着信音が鳴り響く。
助手席の男が携帯に出る。

「はい、来栖です」

哲也はハンドルを握ったまま、来栖の声に耳を傾ける。

「ええ……こちらは空振りです……」

しばらくすると来栖の眼光が一瞬鋭くなる。

「分かりました……それに関して私から言うことはありません……ええ……失礼します」

電話を切ると腕を組み、ため息を吐く。

「何もかも上手くいきやがらねえ」

「……」

信号が青になり、哲也はアクセルを踏む。

「うちの娘はお前のとこで世話になるらしい」

「なるほど」

「一緒に巻き込まれたのはお前の甥だっていうじゃねえか?」

「……」

「なんでこんなことになってやがる?」

「それは俺にも分かりません」

車は交差点を左折する。

「俺はどこで間違えたんだ?」

信号で車は止まる。

「別に間違いも何もないでしょう。ただ、現実は甘くなかったというだけです」

「……」

「ここでその議論をしてもしょうがいない。それに、姉と藍が付いてるなら娘さんはほぼ心配ないはずだ」

来栖は不機嫌そうに唇を歪める。

「今は目の前のことです。こうしてる間にもドラッグの流通は広がっている」

「……」

「何よりも娘さんが大切なのは知っていますが、これに奴らが関わっている可能性がある以上、早く解決しなければ娘さんも安心して暮らしてはいけないでしょう」

「……お前は俺を脅してるのか?」

「別に、事実を言っただけです。奴らの狂行を止めなければ、身内にも危害が及ぶ。だからこそ、俺たちは理守として、この事件を何とかしなければならない。違いますか?」

来栖は大きく息を吐く。

「いや……」

それを見て、哲也も静かに息を吐く。

「一度、これまでに出てきた手がかりを整理し直しませんか?」

「ああ? これまでだって、そうとう考えてきただろ?」

「ええ。だが、我々は二の足を踏み続けている。何かを見落としているんです」

来栖は顔をしかめる。

「だったら、どうするって言うんだ?」

「基本に立ち返りましょう」

「基本?」

哲也は一呼吸置く。

「今回の事件は、どうしても所轄のやり方に引っ張られてます。現場を押さえる、物証を集める、証言を固める。普通の事件なら正攻法ですが、異能犯罪でそれを待っていたら、何もつかめない」

「……」

「事実として、物的証拠があまりにも少ない。これは、ドラッグ製造者だけではなく、バラまいている者たちも異能を操っている可能性が高い。しかも、そんじょそこらの異能者ではない、かなりの手練れだ」

来栖は鋭い目つきで前方を見つめている。

「我々は、表向きの肩書以前に理守だ。そして、あなたが警察にいるのも、警察になるためではない」

来栖は眉間に深いしわを刻み、黙り込んだ。
車内にエンジン音だけが流れる。

「ひよっこが言うようになったじゃねえか?」

「……」

「行き先変更だ」

そう言うと新たな目的地を哲也に告げた。

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