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【長編小説】君の闇、光へと通ず ~現代異能探偵青春譚~

【第029話】決意の一歩、俺が守りたいもの

*

真也は息を飲み込み、そして、扉をノックする。

「……はい?」

返事と共にドアが開かれる。
一瞬視線が合うと、結月はすぐに目を逸らした。

「あのさ――」

言葉を発する間もなく、扉は閉じられた。

「今は何も聞きたくない」

扉越しに彼女が告げる。

「……分かった」

真也は扉を背にして座り込んだ。

「放っておいてって言ってるでしょ」

結月は語気を強める。

「……そうは見えない」

「勝手に決めちゃってっさ、あなたに何が分かるっていうの」

真也は固く口を結ぶ。

「みんな勝手、なんでいなくなろうとするの……」

その言葉が放たれた瞬間、黒い闇が視界を包み込んだ。

*

「本当に一人になっちゃった……」

結月は諦めたように微笑む。

(これが、彼が言っていた心界)

辺りを見回すと、どこまでも暗い闇が続いている。

(一生ここから出れないのかな?)

彼女は抱えた膝をギュッと抱きしめる。

(知りたいって思ったのがいけなかったのかな)

目が潤みだす。

(私、やっぱり疫病神なんだ……)

膝に頭をこすりつける。

(私を生んだら母さんが……そして、すぐに父さんも)

手に力が入る。

(おばあちゃんも、藍さんも、かおりさんも、本当のことは教えてくれない)

頬を雫が流れ落ちる。

(彼は手を差し伸べようとしてくれたのに……何であんなことを……)

涙があふれ出る。

「私は……一人で生きてくしかないんだ……」

彼女の泣き声が静かに響きわたる。

(……温かい気配?)

顔を上げる。

「……なんで、あなたがいるのよ」

そこに立っていたのは真也だった。

*

結月はあわてて涙を拭う。

「なんでだろう……俺にも分からない」

真也は苦笑すると彼女の横に腰を下ろした。

お互いに何を言うでもなく、しばし沈黙が包み込む。

「……こんなはずじゃなかったのに」

結月はかすれた声でつぶやいた。

真也はフッと笑う。

「俺と出会ったのが、運の尽きかもね」

「なにそれ?」

結月は一瞬ムッとした表情をしたが、涙顔がほんの少しだけほころぶ。
それを見て真也も表情を和らげる。

「私は……一人でも大丈夫だよ」

結月は寂しげな表情を浮かべた。
真也はしばらく結月を見つめて、ゆっくりと目を閉じた。

「俺も一緒にいる」

「……えっ?」

結月は目を見開く。

「だから、俺も一緒に行くんだ」

二人の視線が合うと、彼女は目をそらす。

「……あなた、そんなこと言う人間だっけ?」

真也も目をそらす。

「分からない。でも、一つだけ伝えとく」

「?」

「俺は君を遠ざけたわけじゃない……君を守りたかったんだ」

彼は顔を上げる。

「君と一緒にいる時は、こんな俺でも楽しいし、不思議と落ち着く」

「……」

「俺はそれを失いたくなかった、それが怖かった」

結月は神妙な表情で真也を見つめる。

「そんな独りよがりが、あの結果……つくづくダメだな、俺は……」

「……そんなことないよ」

彼女は静かにつぶやく。

「私も怖かった」

真也は結月の方を向く。

「また、いなくなっちゃうんじゃないかと思った」

彼は結月を見つめている。

「そしたら、感情を抑えられなくて……ごめんなさい」

結月はうつむく。

「お互い様だよ。俺の方こそ、ごめん」

二人から、フッと笑みがこぼれる。

「似たもの同士、なのかな?」

「だね」

真也は表情を引きしめる。

「俺は絶対にいなくならない。どんな時も君の味方だ。絶対に君を守り抜く」

結月は真也を呆然と見つめていたが、あわててうつむく。

「それ……誰にでも言ってるんじゃないでしょうね?」

「まさか。初めてに決まってるだろ」

彼も赤面してうつむく。

「……そんなこと言ったって、どうしたらいいか分かんないよ」

結月は耳を赤くしている。

「何も考えなくていい。ただ寄りかかればいいんだ」

真也は穏やかに言った。

「……迷惑、かけるかもしれないよ?」

「大丈夫、君からの迷惑なら光栄だね」

目が合うと、二人とも笑いだす。

「……分かったわよ。どうなっても知らないからね」

結月は涙を拭うと立ち上がり、真也に手を差し伸べた。

「じゃあ、背中は任せた」

彼女の震える手を、彼は震えごとつかみ取る。

「任された。君の気が赴くままに」

結月はムスッとうつむいている。
真也がのぞこうとすると握った手がギュッと強くなる。

彼は静かに微笑む。

(この温もりを、決して手放さない)

真也が結月の手を握り返すと、それに応えるように彼女も彼の手を強く握った。

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