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【長編小説】君の闇、光へと通ず ~現代異能探偵青春譚~

【第051話】言えない気持ち

*

藍と結月が戻ると、店の前で一人の男が佇んでいる。

「あぁ~、休みだったか……」

男は頭をぼりぼりとかき、立ち去ろうとする。

「あら、久しぶりじゃない? どうしたの?」

藍が声をかけると、男は振り向く。

「びっくりした……久しぶりに日本に帰ってきたら、ここのコーヒーが飲みたくなってね」

男は穏やかに微笑む。

「今、休みと知って、打ちひしがれてたところだよ」

本当に残念そうに肩を落とす。
それを見て、藍が申し訳なさそうに結月に視線を送ると、彼女もうなずく。

「休みだけど、帰国記念に一杯くらいは入れてあげるわよ?」

「本当かい? それじゃ、お願いします」

男は藍に向かって手を合わせた。

*

藍と結月はカウンターの中でテキパキと支度をする。
男はカウンター席に座り、手を組み、静かに待っている。

男は姿勢もよく、黒いスーツを着こなし、髪もしっかり整えられている。
時折見せる眼光の鋭さも相まって、何事にも動じなさそうな落ち着きと風格を感じる。

視線に気づいたのか、男は結月を見て穏やかな表情を浮かべる。
結月は慌てて視線を外す。

「この人、どこかのシークレットサービスみたいな雰囲気だけど、コンサルタント会社の社長さんなのよ」

それを見た藍がすかさずフォローするが、男は苦笑いだ。

「別に普通だろ」

「そう思ってるのは本人だけじゃない?」

男は困ったように腕を組む。

「ふう、嫁と娘にも言われたよ」

「娘さん、いるんですか?」

結月が質問する。

「ああ、ちょうど君くらいの年頃かな。どうしてだい?」

「いや、え~っと……」

結月がたじろいでいるのを見て、藍が助け舟を出す。

「そんな雰囲気がないから、驚いちゃったのよね?」

結月もうなずく。

「なるほど、家族がいる感じに見えなかったと……耳が痛いね」

男はしばしうつむいた後に結月の方を見る。

「一つ参考までに聞きたいんだが、仕事ばっかりで、家族を疎かにしている父親ってどう思う?」

結月は口を尖らせる。

「……分かりません」

「そうか」

藍が彼の前に静かにコーヒーを置く。

「ありがとう」

男はカップを口へ運ぶと、ゆっくりと目を閉じる。

「染み渡るね」

彼は寂しげな表情を浮かべる。
結月はそれを見て、申し訳なさそうにうつむいた。

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