【第045話】歴史を背負う者たち
2026/08/29
着物姿の女が静かに問いかける。
「まこちゃん、二つの事件を結び付ける明確な証拠は出とるの?」
来栖は首を横に振る。
「出ていません。こちらで捜査しているドラッグの効果と鷲尾たちが押収した装置の作用が“似ている”ということだけです」
彼女は腕を組み、首をかしげる。
「さよか……どう考えたらええんやろね? 聞いてる感じ、別の思惑を持っとるようにも見えるし、どう繋がってるかイメージできんのよね」
「同感です。そもそも首謀者の異なる別々の事件なのか。それとも、一人の首謀者の下で、複数の組織や協力者が動いているのか……ただ、現時点では断定しない方がいいでしょう。私たちをミスリードさせることが狙いかもしれない」
「せやね、今は先入観を排して、判断材料を集めるべきや……統領、検知系異能の制限はある?」
老紳士は静かに首を横に振る。
「ないよ、特級異能も使ってもらって構わない」
着物姿の女は満足そうに微笑む。
「ほなら、広範囲の霊場揺らぎ探査でもしてみましょか」
かおりと記者風の女もうなずく。
職人風の男は腕を組んで考え込んでいる。
「隆介はん、どうかしはった?」
彼はゆっくり目を開ける。
「いや、太一が言っていた可能性を考えていた」
研究者風の男はビクッと顔を上げる。
職人風の男は手を横に振る。
「ああ、別に責めてるんじゃない。実際、こちらの動きが読まれている感は否めないと思ってな」
一同の目つきが一斉に鋭くなる。
老紳士は大きくため息をつく。
「疑い始めたらきりがない。ただ、理守誓約の力は皆が一番よく分かっているはずだ」
老紳士は紋章が刻まれた袱紗をそれぞれに手渡した。
皆、無言で袱紗を開き、中身に目を通す。
「では、方針を伝える。これより捜査にあたる八名は、特級と一級の二名一組の計四組で動くこととする。状況を把握している慎くん、哲也くん、ゆかりくんについては組を分け、残り一組は私が支援する。かおりくんは引き続き、保護特例の対応を頼む」
老紳士は円卓を囲む他の九名の一人ひとりに視線で確認する。
「御上から特級権限解放の許可をいただいている。指令状は肌身離さず携行するように。千年以上続く、我々の使命を全うする時だ。人々の安寧のため力を貸しておくれ」
一同、立ち上がり、袱紗を胸に当てる。
先人たちの力が宿る袱紗に新たな使命が刻まれる。
