【第044話】円卓の疑念
2026/08/15
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「やあ、よく来てくれた。好きなところにかけてくれ」
老紳士の歓迎に、ゆかりは軽く会釈をすると入口に最も近い席に腰を下ろした。
それを確認すると彼はポンと手を叩く。
「さて、揃ったから始めるとしようか」
老紳士は円卓に座った面々を見回すと穏やかに切り出した。
「今回集まってもらったのは、警察出向組に対応してもらっている二件の事件についてだ」
数名の参加者の表情が険しくなる。
「ここ二十年の慣例からすれば、警察が対応すべき事案ではあるが、複雑かつ高度な異能犯罪ということで、理守主導に切り替えることにした。まずは、慎くんとゆかりくんから説明してもらうが、第一情報封鎖案件であることに留意してくれ」
老紳士が視線を送ると、来栖とゆかりが立ち上がり、資料を示しながら、これまでの経緯を説明した。
他の面々も神妙な面持ちでそれに耳を傾けた。
適宜、質疑応答をしながら、その説明は数十分にも及んだ。
「以上が、本日時点での事件の詳細だ。他に質問があれば受け付ける」
小太りの重役風の男が切り出す。
「質問してもいいかな?」
「どうぞ」
「ドラッグの成分検査で、理院とかおりちゃんとの結果に違いがあった件はどう見ている? 異能科学の権威である理院が誤判定をするだろうか?」
哲也が来栖に視線を送ると、彼は静かにうなずいた。
「その件は私から。被疑者たちは、有害なものと無害なものを混ぜて流通させている可能性があります。理院へ検体として送ったものも、たまたま全て無害のものだったと考えられます」
「ふむ……だが、被害者から押収したものなのだろう? それが無害というのはおかしくないか?」
「その通りです。おかしいからこそ、我々は今ここに集まっている」
哲也が毅然と言い放つと重役風の男は黙り込む。
かおりがため息をつく。
「私が有害成分を検出したのも、十個中一個だけ。現段階において、無害と判定されたものが実は有害だったのか、時間の経過で無害になるのか、何かの組み合わせや条件で有害になるのかは判断できない」
研究者風の男が何かを閃いたようだ。
「理院も含め身内に間者がいるってことはないか?」
その一言で、議場から音が消えた。
両隣に座っているゆかりと記者風の女が同時に彼の靴を踏みつける。
「! 可能性を言っただけだろ!」
様子を見守っていた職人風の男は頭をかく。
着物姿の女がポンと手を叩く。
「ほれ、喧嘩するために集まったんとちゃうやろ。いい大人なんやから、よう考えてからものを言いや。そう思わん?」
彼女が議場を見回すと皆、唇を堅く結んだ。
