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【長編小説】君の闇、光へと通ず ~現代異能探偵青春譚~

【第040話】焦り

「なんだその目は!」

整えられた髭を蓄えた男は烈火のごとく怒鳴る。

「……」

「お前が生きてられるのは誰のおかげだ!?」

髭の男は、倉田の胸倉に掴みかかる。

「このプロジェクトは我々のリスクも大きい。慎重に動かなければ我々が破滅します」

「破滅がどうした! 俺の立場はどうなる!?」

(……本音が出たな)

「彼らの提示の半分も達成できてないんだぞ!」

倉田は冷めた目で髭の男を見つめている。
髭の男は奥歯を噛み締め、倉田を突き飛ばす。

「2ヶ月で何とかしろ! 分かったらさっさと行け!」

「分かりました。善処します」

彼は襟を整えながら淡々と答える。

「善処ではなく結果を出せ!」

倉田は無言で一礼すると部屋と邸宅を後にした。
そして、足早に車の後部座席に乗り込むとすかさず発車する。

「どこへ向かいます?」

運転席の男が倉田へ問いかける。

「適当に走った後に新第三に向かってくれ」

車は幾度か右左折を繰り返しながら、邸宅街を離れていく。
運転席の男はバックミラーをにらむ。

「……付けられていますね」

「ふぅ、どんな奴だ?」

「シルバーのセダンに男が二人、サツでしょうか?」

倉田は口に手を当てる。

「いや、多分違う。警察はそこまで掴めていない」

「つまり、身内ってことですか?」

「おそらく榊の手下だろうな」

「組長の?」

「ああ、いよいよ余裕がなくなってきたらしい。今日もえらい剣幕で結果を迫られた」

「へっ、派手にやり始めたわりに胆力がないこった」

倉田は一笑すると携帯を取り出す。

「ひとまず、新第三に向かうのはなしだ。本社に行く」

「了解です。後ろのは? 巻きますか?」

「いや、こちらで引き付ける。北ルートを使え」

そして、電話をかけ始める。

「倉田だ。本社と旧拠点の人員を新拠点に近づけるな。次の通達まで、外に出ている連中だけで対応しろ。一般社員には気取られるな……ああ、詳細は戻り次第伝える。よろしく頼む」

電話を切ると、今度はタブレットを取り出し、思考にふける。
その後も倉田は短い電話を数本かけた。
淡々と指示を出し、人の動きを変えていく。

一段落すると、煙草に火を点ける。
窓に目を向けると雨が降り始めたようだ。

(時間がないか……)

深く吐き出された煙にはため息が混じる。
その煙は薄く開けた窓から吸い込まれ、千切れるように後方へと消えていった。

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