【第038話】暗中模索
2026/05/23
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激しい音と共に扉が開き、防弾ベストを着た二人組が入ってくる。
男たちは周囲に気を配りつつ、手慣れた様子で奥へと進んでいく。
それぞれ、各部屋を用心深く確認し、奥へと向かっていく。
一人の男が、最奥の部屋の扉に手をかける。
鍵がかかっているらしい。
それを見た、もう一人の男が扉のノブに手をかけると、扉の錠は赤く膨れて溶け落ちた。
その瞬間に、男は扉を蹴破る。
ドカドカと中へ入り、辺りを見回すが、人の気配はない。
扉の近くに立っている男が照明を点ける。
それと同時に、奥に入り込んだ男は、テーブルを蹴り飛ばした。
そして、投げやりに無線へと告げる。
「空だ」
しばらくの後、無線から応答が来る。
「了解。待機組も向かいます」
「二名は待機、本部へ連絡と周辺警戒」
そう言うと手袋をはめ、収納を開け始める。
扉近くの白髪男はそれを見るとため息をつく。
彼も部屋の反対側から収納を確認し始める。
扉や引き出しを閉める音だけが室内に響く。
後続の二名も顔を出す。
彼らは奥の方をチラッと見ると手前側にいる白髪男へ寄ってきた。
「雪峰さん……」
「君らは入り口側の部屋から頼む」
二人はホッとした表情でうなずくと足早に部屋を出ていった。
哲也も目の前の収納へと戻る。
奥の方からは、激しく引き出しを閉める音が聞こえていたが、突然止んだ。
「おい」
哲也が奥の男の方へ寄る。
短髪男が一枚の紙切れを差し出す。
「なめてやがる」
短髪男が吐き捨てるように言うと部屋を出ていってしまった。
(これで五件目か)
再度、紙切れに目を落とす。
都心周辺の地名とA~Cまでのアルファベットが羅列されている。
(ゲームのつもりなのか?)
すでに捜査に入った二件と今日踏み込んでいる地名も入っている。
そして、それら地名には“C”と書かれている。
(外れということか?)
紙切れを掴んだ指に力が入る。
「あの~……」
扉から若手の捜査員が声をかける。
「警部は?」
哲也はお手上げのポーズで応える。
「もしかして、また?」
「ああ」
指で挟んだ紙切れを見せる。
若手の捜査員も中へ入ってくる。
「そっちはどうだ?」
「もぬけの殻です。什器の中にも何もないです」
哲也は深く息を吐く。
「いったいどういうつもりなんでしょう?」
「分かれば苦労はしない。律儀にヒントを残していくことも含めて理解不能だ」
「そもそも、ヒントなのかも疑問ですけどね」
(その通りだ。被害は広がっているが、確証のある手がかりがない。この情報にすがっている側面はある)
哲也は腕を組む。
「捜査の方針を見直した方がいいかもしれないな」
「そうですね。ただ……」
若手の捜査員は険しい表情を浮かべる。
「俺に考えがある。警部の方は何とかする」
「すみません……」
「あの人も頑固ではあるが思慮は深い。タイミングを見て話せば分かってくれるはずだ」
「ありがとうございます。この後は?」
「警部と俺は本部に戻って次の準備に入る。谷くんたちは、全部屋を調べたら、鑑識チームに引き渡してくれ」
「了解です」
谷が部屋を出ていくと哲也は一際大きなため息をついた。
