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【長編小説】君の闇、光へと通ず ~現代異能探偵青春譚~

【第037話】逆境

錆び始めた鉄の扉をノックする。

「開いてるよ」

奥から投げやりな返事が聞こえてくる。
廊下を進み、一番手前側の部屋に差しかかる。

「お邪魔します」

「おう」

髭を整えた老人がチェアを回転させ、こちらを向く。

「差し入れです」

老人は渡された紙袋をのぞき込む。

「……こいつを素直に受け取っていいのか、毎度考えさせられるよ」

「別に他意はないですよ。迷惑料だと思ってもらえれば」

「迷惑料ねぇ……」

老人は紙袋をデスクの下へ置く。

「動きは?」

「今のところ、外の動きはないな。お前さんから言われた患者たちも特段の大きな不調は出ちゃいない」

「分かりました。そろそろ、こちらも次の動きをしようと思います」

「何かあったのか?」

「ええ、ノクスと異能対方面で」

老人は腕を組む。

「両方とも動きを見せるような奴らじゃないだろ?」

「ええ、私も同感です」

老人は考え込む。

「そもそも、どっからの情報だ?」

「昔から付き合いのある情報屋です」

「そいつは信用できんのかい?」

「できます。下積み時代からの付き合いです」

老人は鋭い眼光で倉田を見つめる。

「ふむ……で、その動きってのは?」

「異能対が表側にも認識できる形で捜査をしているようです」

「なるほど、それがノクスだってことか?」

「推測の域ですが、異能対が動く規模の異能犯罪をできるのは奴らだけでしょう」

老人はデスクを指で叩く。

「まあ、異論はねえが、お前らの動きと関係があるかは分からねえだろ?」

「その通りです。ただ、思想の是非は別として、秘密結社としてのノクスは優秀です。リスク管理については、慎重でち密。それは我々が一番知っている。だからこそ、この事態は異常なんです」

「確かにな。だが、それだけで関係があると言ってるわけじゃねえよな?」

「もちろん。ただ、私たちのプロジェクトと今回の事象が関係あるかは重要ではありません。今、言えることは、この異常事態に対し、組織内で引き締めが発生するということです。そして、それをされることは私たちにとっては望ましくない」

「だから、その前に動きに出るってことか?」

「ええ。リスクも大きいが、異能対が大々的に動いている今はチャンスでもあります」

老人は口角を上げる。

「ノクスの奴らはお前を飼い殺しにしようと思ったんだろうが、おかしなもんだな。兄貴もあの世で誇らしく思ってるだろうよ」

「そうだといいんですがね」

「俺もバックアップはしてやる。榊の野郎と奴らに一泡吹かしてやれ」

倉田はうなずく。

「もし、お伝えした状況が来てしまった場合は、頼みます」

「おう、任せとけ」

「ありがとうございます。今夜からエサまきを始めます」

倉田と老人は固く視線を交わした。

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