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【長編小説】君の闇、光へと通ず ~現代異能探偵青春譚~

【第036話】密談

東京都心のとある雑居ビル。

「倉田さん、被験者が新規で一名追加です」

坊主頭の男は電話を切りながら、奥のデスクに座る男へ伝える。

「……分かった」

倉田と呼ばれる男は、深く息を吐くと、眉間に手を当てる。
目を閉じ、何かを思案している。

「一息入れましょう」

坊主頭はコーヒーが入った紙コップを倉田のデスクに置く。

「そうだな」

倉田は立ち上がり、紙コップとともに目の前のソファーに腰を下ろす。
それを確認すると、坊主頭も対面のソファーに座る。

「おやじはこんなことを望んでいたんでしょうか?」

坊主頭がつぶやく。

倉田は懐から煙草を取り出し、火をつける。
一息吸うと、深く吐き出した。

「望んでもいないだろうし、知りもしなかっただろうよ」

倉田は吐き捨てるように言う。

「兄貴、俺はやっぱりあの野郎が許せねえ」

坊主頭が拳を握りしめる。

「同感だが、今やあいつは俺たちのボスで、なぜか強力なバックが付いちまってる」

倉田はコーヒーを口に運ぶ。

「俺らはどこまで行こうと社会のはみ出し者だ。ただ、それでもだ、人としての道だけは踏み外しちゃいけねぇ」

「その通りだ……この状況でも、それを分かってるお前たちがいてくれることが救いだな」

彼は穏やかに微笑む。

「水くせえ、組織のボスが誰であろうと、俺たちは兄貴の部下だ。兄貴が信じるようにやればいい」

「すまないな。お前たちには苦労をかける」

坊主頭は首を横に振ると神妙な表情を浮かべる。

「ただ、この小細工もいつまでもつか……」

「まだ、バレてはないだろうが、時間の問題だろうな」

「何かあったんです?」

倉田は一枚のメモを取り出し、坊主頭へ渡した。

「これは?」

「今朝の川上からの報告だ」

坊主頭は一通り黙読すると、倉田へそのメモを返した。

「異能対ですか」

「ああ、やつらにしては珍しく派手に動いてるみたいだな」

「そりゃあいい。こっちとしては願ったり叶ったりじゃないですか?」

「そうではあるんだが、高村、この場所を知ってるか?」

倉田はメモをテーブルの上に置き、ある場所を指さす。

「いや、知らねぇな」

「どうやら別の事件が発生してるらしい」

「異能対が動くような事件が?」

「ああ、それにこの慌てっぷりを見るに、それなりにでかいヤマなんだろう」

「こっちもなかなかのヤマだと思いますがね」

倉田は腕を組む。

「この動きをどう読む? 異能対が動くような組織犯罪を起こせるのは、俺が知る限り奴らしかいない」

「まあ、十中八九そうでしょうが、バレたわけじゃないでしょう。こんな回りくどいことをする理由がねえ」

「ああ、俺もそう思う。問題は、これが元々計画されてたものなのか、それとも、こっちの計画が思わしくないから出てきたものか、どっちなのかだ」

高村も煙草に火をつける。

「後者じゃないですかね。奴らがそう簡単に異能対に気づかれるヘマをするとは思えねえ。追加の工作を実行したが内容がお粗末で尻尾を掴まれた、そんなところでしょう」

「その可能性が高そうだな。追加要求への備えもした方がいいな……悪者も楽じゃねえな」

倉田は頭をかく。

「表面的にやってることは極悪非道、裏では神や仏でもできねえやり方で人道を守ってる」

「俺たちが元からまっとうであれば、こんな回りくどいことにはなってないがな」

「違いない」

二人は失笑する。

「ここまで来たら、徹底的に俺たちなりの悪役を演じ切ってみせようじゃねえか」

「もちろんだ。いい加減、異能対も舞台に上がってきてほしいもんだ」

倉田はメモをライターで燃やした。

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