【第035話】盲点の手がかり
2026/03/28
*
「謎の装置ですか……」
「ああ」
真也のつぶやきにゆかりも応える。
「お前の暴走が起こった場所に埋まっていた」
「……」
「今、あたしたちの方で解析を進めてるところだ」
ゆかりは顔を上げる。
「現時点で分かっていることは、異能の活性を促す作用があるらしいということ」
「それで自分は暴走したと?」
彼女はうなずく。
「ただ、不可解な点も多い。お前たち、異能の“陰陽”は知っているか?」
真也と結月は首を横に振る。
ゆかりが視線を送ると、かおりはうなずく。
「陰陽ってのは、異能の根本的な性質の分類だ。異能血統とも呼ばれてる」
一呼吸おいて、ゆかりは続ける。
「陰は“静”、陽は“動”の異能血統を指す。お前たちの場合だと、真也は陰の性質で、ゆづは陽の性質だ」
真也は顔をしかめる。
「それは、俺が陰キャだから、陰ってことですか?」
「違う。それはたまたまだ。簡単に言うとだな、引き込む性質があるものは陰、引き出す性質があるものは陽だ」
結月がすかさず質問する。
「その性質は分かりましたけど、何が問題なんですか?」
「あの時、あたしたちは何ともなかっただろ?」
「ええ……」
ゆかりは目を閉じ、静かにまぶたを上げる。
「おそらくだが、陰の異能にだけ作用している」
「!」
しばしの沈黙の後、かおりが口を開く。
「異能分野の科学も年々進化している。だが、そうだとしても、陰陽を区別するような高度な技術は聞いたことがない」
彼女は静かに息を吐き出す。
「ああ、その辺の異能者が悪だくみでできる芸当でないことは確かだ」
真也が恐る恐るたずねる。
「組織的ってことですか?」
ゆかりは視線を落とす。
「まあ、そう考えるのが自然だな。だが、ここから先はあたしたちの役目だ」
彼女は鋭い視線で真也を見つめる。
「そこで、何個かお前に確認したい」
彼が自身を指さすと、ゆかりもうなずく。
「あの時、どんな感覚があった? 何でもいい、覚えてることはないか?」
「感覚ですか? う~ん……」
真也は腕を組み、思案する。
「影がざわめく感覚、その後、下の方から熱い感じが突き抜けていくような……そこから後は……すみません」
ゆかりは首を横に振る。
「いや、それだけでも十分だ」
真也はあごに手を当てる。
「どうかしたか?」
「えっと、関係あるかは分からないんですけど、あれ以降同じ夢を見ているような気がするんですよね」
「夢?」
彼はうなずく。
「はっきりとは覚えてないんですけど、あの神社のような建物が出てきて、誰かと話すような……」
ゆかりは考え込む。
「……暗示」
かおりがつぶやくとゆかりも顔を上げる。
「なるほど……そういうことか」
かおりは真也のもとへ行き、彼の手を握り、目を閉じる。
「母さん?」
結月も心配そうに真也を見る。
「……見つけた」
そう言うと何かが書かれた紙を取り出し、彼の胸へと押し当てる。
彼女が言霊を唱えるとその紙はみるみる黒色へと変わっていく。
「吸い出した」
彼女がその紙をテーブルの上に置くと、すかさず、藍が印を切りながら言霊を唱える。
「ふぅ……これで一安心かしら」
「相変わらず、見事な手並みだな……」
大人たちの安堵の横で、その様子を真也と結月は不安そうに見つめていた。
