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【長編小説】君の闇、光へと通ず ~現代異能探偵青春譚~

【第030話】心探し

真也が一歩を踏み出すと、結月も一歩を踏み出す。

「これからどうすればいいんだろ?」

結月がつぶやく。

「心界は初めて?」

「うん」

真也の問いに、彼女は不安そうな表情になる。

「そうだな、どこから説明したらいいか……」

彼は右手を口にあてる。

「ここは、私の異能が生み出した空間って認識で合ってる?」

真也は、目を見開く。

「ああ……そうだね」

「どうしたの?」

結月は彼をのぞき込む。

「いや、飲み込み早いなって」

「そう?」

真也は微笑む。

「なに?」

「いつもの感じだね」

結月は赤面して、そっぽを向く。
それでも、手はギュッと握られている。

「まずは、出るための糸口探しだね」

「糸口?」

結月が顔を向けると真也はうなずく。

「心界を出るためには、異能の“核”を見つけないといけない」

「異能の核……」

「そう、それに触れることができれば、心界から出れるらしい」

結月は怪訝な表情を浮かべる。

「あなたは見つけてるんじゃないの?」

真也は首を振る。

「俺は自分の心界にすら入れてないんだ。他人のは何回も入ってるんだけどね」

「そうなんだ……」

「何かトリガーがあるみたいなんだけど、まだ分かってないんだ」

彼がもの悲し気な顔をすると、つながれた結月の手に力が入る。

(“大丈夫だよ”ってことかな?)

真也が微笑むと、結月はフッと表情を緩めた。

「話を戻すと、手がかりを探して、核を見つけないとってことね」

「うん、ただ、闇雲に歩いて見つかるものじゃないみたい。雪峰さんの言葉を借りるなら、“自分の心を探す”ようなイメージらしい」

「う~ん……」

「まあ、この言葉だけだとね……」

しばしの沈黙のあと、真也が何かを思いつく。

「あのさ、想いの断片をたどってみない?」

「想いの断片?」

真也はうなずく。

「この空間って真っ暗闇だけど、場所によって、入ってくる想いというか温度というか、それが違うんだよね」

「そうなの?」

「うん、Irisの人たちの心界ではあまり感じなかったんだけど、この心界ではそれがある」

結月は口を尖らせる。

「なんか恥ずかしい。全部分かっちゃうってことでしょ?」

「……」

彼女は考え込む。

「……私が変なこと思ってても引かないで」

結月は弱々しくつぶやくと、真也は彼女の手をギュッと握る。

「引くわけないだろ」

「うそ、嫌な面見たら、いなくなっちゃうんでしょ」

真也は彼女の空いている手も掴み、目を見つめる。

「俺はいなくならない。どんなことがあっても一緒にいる。大丈夫だから」

結月は真也の瞳をしばらく見つめて、うなずいた。

「分かった。じゃあ、進む」

真也もうなずいた。
そして、二人で改めて前を向く。

「ヒントは“心探し”ね」

「そうだね。その言葉からすると、君っぽい方へ歩いていく感じなのかな? 一先ず、それで行ってみる?」

「うん」

一歩を踏み出し、また一歩と歩みを進めていく。

「ホント、不公平。私だけ気持ちを曝されちゃってっさ」

しばらくすると結月がプンプン怒りだす。

「俺の時には君が一緒に来てくれるんでしょ? それでお相子じゃない?」

真也が彼女をのぞき込む。

「……それなら許す。私だけさらし者にしたら許さないからね」

「分かってるよ」

結月が握った手を振り出すと真也もそれに応えた。

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