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【長編小説】君の闇、光へと通ず ~現代異能探偵青春譚~

【第029話】決意の一歩、俺が守りたいもの

真也は息を飲み込み、そして、扉をノックする。

「……はい?」

返事と共にドアが開かれる。
一瞬視線が合うと、結月はすぐに目を逸らした。

「あのさ――」

言葉を発する間もなく、扉は閉じられた。

「今は何も聞きたくない」

扉越しに彼女が告げる。

「……分かった」

真也は扉を背にして座り込んだ。

「放っておいてって言ってるでしょ」

結月は語気を強める。

「……そうは見えない」

「勝手に決めちゃってっさ、あなたに何が分かるっていうの」

真也は固く口を結ぶ。

「みんな勝手、なんでいなくなろうとするの……」

その言葉が放たれた瞬間、黒い闇が視界を包み込んだ。

「本当に一人になっちゃった……」

結月は諦めたように微笑む。

(これが、彼が言っていた心界)

辺りを見回すと、どこまでも暗い闇が続いている。

(一生ここから出れないのかな?)

彼女は抱えた膝をギュッと抱きしめる。

(知りたいって思ったのがいけなかったのかな)

目が潤みだす。

(私、やっぱり疫病神なんだ……)

膝に頭をこすりつける。

(私を生んだら母さんが……そして、すぐに父さんも)

手に力が入る。

(おばあちゃんも、藍さんも、かおりさんも、本当のことは教えてくれない)

頬を雫が流れ落ちる。

(彼は手を差し伸べようとしてくれたのに……何であんなことを……)

涙があふれ出る。

「私は……一人で生きてくしかないんだ……」

彼女の泣き声が静かに響きわたる。

(……温かい気配?)

顔を上げる。

「……なんで、あなたがいるのよ」

そこに立っていたのは真也だった。

結月はあわてて涙を拭う。

「なんでだろう……俺にも分からない」

真也は苦笑すると彼女の横に腰を下ろした。

お互いに何を言うでもなく、しばし沈黙が包み込む。

「……こんなはずじゃなかったのに」

結月はかすれた声でつぶやいた。

真也はフッと笑う。

「俺と出会ったのが、運の尽きかもね」

「なにそれ?」

結月は一瞬ムッとした表情をしたが、涙顔がほんの少しだけほころぶ。
それを見て真也も表情を和らげる。

「私は……一人でも大丈夫だよ」

結月は寂しげな表情を浮かべた。
真也はしばらく結月を見つめて、ゆっくりと目を閉じた。

「俺も一緒にいる」

「……えっ?」

結月は目を見開く。

「だから、俺も一緒に行くんだ」

二人の視線が合うと、彼女は目をそらす。

「……あなた、そんなこと言う人間だっけ?」

真也も目をそらす。

「分からない。でも、一つだけ伝えとく」

「?」

「俺は君を遠ざけたわけじゃない……君を守りたかったんだ」

彼は顔を上げる。

「君と一緒にいる時は、こんな俺でも楽しいし、不思議と落ち着く」

「……」

「俺はそれを失いたくなかった、それが怖かった」

結月は神妙な表情で真也を見つめる。

「そんな独りよがりが、あの結果……つくづくダメだな、俺は……」

「……そんなことないよ」

彼女は静かにつぶやく。

「私も怖かった」

真也は結月の方を向く。

「また、いなくなっちゃうんじゃないかと思った」

彼は結月を見つめている。

「そしたら、感情を抑えられなくて……ごめんなさい」

結月はうつむく。

「お互い様だよ。俺の方こそ、ごめん」

二人から、フッと笑みがこぼれる。

「似たもの同士、なのかな?」

「だね」

真也は表情を引きしめる。

「俺は絶対にいなくならない。どんな時も君の味方だ。絶対に君を守り抜く」

結月は真也を呆然と見つめていたが、あわててうつむく。

「それ……誰にでも言ってるんじゃないでしょうね?」

「まさか。初めてに決まってるだろ」

彼も赤面してうつむく。

「……そんなこと言ったって、どうしたらいいか分かんないよ」

結月は耳を赤くしている。

「何も考えなくていい。ただ寄りかかればいいんだ」

真也は穏やかに言った。

「……迷惑、かけるかもしれないよ?」

「大丈夫、君からの迷惑なら光栄だね」

目が合うと、二人とも笑いだす。

「……分かったわよ。どうなっても知らないからね」

結月は涙を拭うと立ち上がり、真也に手を差し伸べた。

「じゃあ、背中は任せた」

彼女の震える手を、彼は震えごとつかみ取る。

「任された。君の気が赴くままに」

結月はムスッとうつむいている。
真也がのぞこうとすると握った手がギュッと強くなる。

彼は静かに微笑む。

(この温もりを、決して手放さない)

真也が結月の手を握り返すと、それに応えるように彼女も彼の手を強く握った。

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