【第046話】狂信者
2026/09/12
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「ふう~……」
倉田はタバコの煙と共に大きく息を吐き出す。
目の前に見える湾の穏やかな波はほのかな潮の香りを運んでくる。
それとは対照的に、後ろの倉庫では、彼の部下たちが慌ただしく荷物の片づけをしている。
「倉田さん」
息を切らしながら高村がやってくる。
「今朝、納品されたブツなんだが、何だかいつもと違う」
*
「こいつは……」
倉田はパッケージを手に取る。
パッと見た感じは巷でよく見るタブレット菓子のようだ。
グレープ味と書かれている。
彼は奥歯を噛み締め、パッケージを破ると、コイン型のタブレットが現れた。
どこかで見たような紫色をしている。
彼の震える手を皆、険しい表情で見つめている。
これが何を意味するか。
その場にいた誰もが同じ結末を想像したに違いない。
「喜んでいただけましたか?」
声の方を見ると、いつの間にか、目の前の山積みダンボールの上に人が立っている。
取り囲んでいた構成員たちが一斉に銃を向ける。
「おやおや、物騒な歓迎ですね」
仮面の男は薄い笑みを崩さない。
「何者だ? ここは部外者の立ち入りが禁止だ」
倉田はゆっくりとした口調で問う。
「これはこれは失礼しました。ノクスエテルヌム、エリシアプロジェクト担当のエリックと申します」
彼は胸に手を当て、深々と頭を下げた。
白いスーツも相まって、貴族のような風格を感じさせる。
倉田が右手を上げると部下たちは銃を下ろす。
「クライアントとは知らず、失礼した。本日はどういったご用向きで?」
エリックは口角を上げる。
「はは、ちょっとした新製品のご紹介ですよ」
彼は懐から同じパッケージを取り出す。
「見事でしょう? これを再現するのには苦労しました」
倉田は表情を変えない。
「……どうしてまた、新商品を?」
エリックは満足そうにうなずく。
「ああ、皆さんが苦労されているご様子でしたので、私たちも何かお手伝いできないか? そう考えました。この時、私にアイディアが舞い降りました。これは、神の思し召しに違いない!」
「……」
彼は両手を大きく広げ、声高らかに宣言する。
「さあ、これを早く世界へ送り出してください! 私たちのユートピアが待っています! きっとあなたたちの愛する人々も救われるでしょう!」
エリックの高笑いだけが広い倉庫に鳴り響いた。
