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【長編小説】君の闇、光へと通ず ~現代異能探偵青春譚~

【第032話】表裏一体

「こっちかなぁ……」

迷いながらも、結月と真也は心界を進む。

「だんだん迷いがなくなってきたね?」

「そうかな? う~ん……」

結月は複雑な表情を浮かべている。

「そうでもないのかな?」

「むしろ、進むほど悩むというか、分からなくなるというか」

「分からなくなる?」

彼女は立ち止まる。

「そう、上手く言えないけど、どっちもある気がする」

「それは選択肢がってこと?」

「うん……」

結月は言葉を絞り出す。

「なんだろ、イケイケの自分とナーバスな自分がいるみたいな? 時と場合でどっちもあり得るし……」

「確かに」

真也は口に手を当てる。

「選んではいるんだけど、罪悪感もあるっていうか、何か違うなって感じもあるし」

「う~ん……」

二人で考え込む。
そして、真也が顔を上げる。

「ちょっと整理した方がいいかもね。罪悪感があるっていうのはなんか違う気がする」

「そうだね、この違和感は良くないかも」

彼はうなずく。

「あのさ、最初はあなたが選んでくれてたでしょ? あれはどうやって選んでたの?」

「あれ? う~ん、選んでたっていうよりは、君っぽい方に行こうって感じかな」

「私っぽい方?」

結月は真也の方を見る。

「そうそう、こういう想いや願いがあったんじゃないかな? みたいな」

彼女は空いた手を胸の前で握りしめる。

「?」

「……あのさ、真剣に考えてくれるのは嬉しいけど、そこまで分析されるとちょっと恥ずかしい」

「……ごめん、別に他意はないんだ」

真也はうつむく。

「分かってるよ」

結月がそう言ってつないだ手を振ると彼も顔を上げる。

「じゃあ、選んでるって感じじゃないんだね?」

「うん、違和感のない方に行くって感じ」

「違和感がない方……」

彼女は目を閉じる。

「そうだなぁ……想いの断片って、くっきりしてるってよりは、グラデーションして混じり合ってるみたいな感じじゃない? だから、なんというか、はっきりする方ではなくて、ちょうどいいところを行くみたいな」

「ちょうどいいところ? また、難しいこと言うね」

結月は顔をしかめる。

「他にいい表現があればいいんだけどな、う~ん……」

真也は頭をかく。

「つまり、相反するものだったとしても、どっちかを捨てたりはしてないってこと?」

「そうだね……むしろ、混じってるところを行ってたかも。捨てる捨てないっていうか、表裏一体っていうか、それも含めて君かなって」

「あ~、もっと分からなくなってきたかも」

結月は指で眉間を押さえる。

「俺も上手く言えたらいいんだけど……まあ、一つ言えることは、どちらも捨ててないし、どちらも否定してないってことかな」

「どちらも? どういうこと?」

結月は真也を見つめる。

「だって、両方とも君じゃん」

「両方とも私……」

「そう。普段の強い君も、たまに見せる弱い君も、両方あるから、君なんだと思うしね」

彼女は目を見開く。

「弱い部分もあるから優しくなれるし、その想いが君の原動力になって、強さにもなってるじゃないかなって」

真也が結月の視線に気づく。

「どうしたの?」

彼女は首を振る。

「いや、なんでも……そっか、両方ともつながってるってことなんだね」

「うん、だと思う」

結月は静かに息を吐き出す。

「弱さが強さの源か……考えたことなかったな」

「俺も気づいたのは今だけどね」

真也は失笑する。

「そう考えると、本当の意味で強い人って、自分の弱さを受け入れて、生きていこうって人なのかもね」

「……」

「そういう人の方がかっこよくない?」

彼は結月をのぞき込むと、彼女も穏やかにうなずいた。

「そうだね」

「でしょ」

真也はつないだ手を振る。

「もう迷わない」

そう言うと結月は新たな一歩を踏み出した。

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