アルファエイトスタジオのテーマ

Novels

【長編小説】君の闇、光へと通ず ~現代異能探偵青春譚~

【第031話】あなたのいいところ

結月は眉間にしわを寄せる。

「あのさ、違いがよく分からない……」

「そうかな? さっきの場所とこことではかなり違うんだけど……たぶんこっちかな?」

彼女は真也に手を引かれながら歩みを進める。

「なんか複雑……」

「なんで?」

結月は口を尖らせる。

「だってさ、あなたは分かって、自分じゃ分からないんだよ?」

「う~ん……」

「自分のことなのに、よく分からないまま」

彼女は視線を落とす。
真也も考え込む。

(確かに、彼女自身が納得しないまま進むのはよくないかも)

彼は足を止める。

「そうだね、君の言うとおりだ」

「えっ?」

結月は真也を見つめる。

「これは本来、君自身が探していくものだ。俺が勝手に決めるのは違うな。ごめん……」

「別に攻めてるわけじゃ……私が自分で分からないのがいけないんだから」

彼は首を振る。

「いや、勝手に決めるなって言われたばかりなのにさ……」

結月は目を見開く。

「別に勝手じゃないんじゃない? 私も嫌だったら嫌って言えるし」

「そうだけど、君が選んだ方がいいと思う」

真也はまっすぐに彼女を見つめる。
結月はしばし考え込み、顔を上げる。

「そうだね。私の異能だから、私が理解しないと」

彼もうなずく。

「ねえ、感覚を教えてくれないかな?」

「感覚?」

「そう、それが分からないんじゃ進めないから。まず、自分が“想いの断片”だっけ? それを掴めるようになりたい」

「分かった」

真也は口に手を当てる。

「今は、何か感じる?」

「そうだねぇ……そよ風くらいのサワサワするような感覚だけかな。あなたが言うような、温度とか、想いが入ってくるとかはないかな」

「なるほど……何が違うのかな?」

結月は目を閉じる。

「う~ん、人も違うし、考え方も違うし……そんなの上げ始めたら切りないんじゃない?」

「そうだけど、何かが違うからこそ、気づけてるってことでしょ? だから、そこにヒントがあるんじゃないかな」

二人で考え込む。

「大きいところで言えば、視点は一つあるかもね?」

「視点?」

結月は真也の方を見る。

「そう。君は自身だから主観で、俺は他人だから客観」

「他人だから見えることもあるみたいな感じってこと?」

「まあ、そんな感じかな? 可能性でしかないけど」

彼女は顔を上げる。

「試してみる」

真也は目を見開く。

「手がかりもないし、思いついたものを試そう。やれば何かしら変化があるから、そこから掴めるものはあると思う」

「さすが。君のそういうところ、俺、ホント尊敬してる」

結月は怪訝そうに真也をのぞく。

「それは褒めてるの?」

「褒めてる、褒めてる。頼もしいし、好きだね」

彼女は赤面する。

「そんなところ褒められたの初めて」

「嫌だった?」

結月は首を振る。

「嫌じゃない、嬉しかった」

真也は微笑む。

「上っ面で人を見るのが嫌でさ、そういう感じになっちゃうんだよね」

結月も微笑む。

「それはあなたのいいところ。私も好きだなそういうの」

真也は赤面し、視線をそらす。

「ずるいな。それって褒めてる?」

「また同じくだりをするの?」

二人で笑い合う。

「仕返し成功だね」

結月がVサインを見せつけると真也は口を尖らせる。

「なんのだよ。君は褒める部分の宝庫だから覚悟しときなよ」

「今度は宣戦布告? 褒めたって何も出ないよ」

「関係ない。俺が褒めたいから褒めるんだ」

「じゃあ、楽しみにしてる」

「うん」

そうして、二人が笑い合うと、温かい空気が二人を包み込んだ。

TOP