【第024話】巡り巡って
2026/01/10
*
「意外と多いな」
真也は頭をかく。
「駅から歩ける範囲でも七か所。日本人は思ったより信心深いみたい」
結月は小さく息を吐く。
「まるで日本人じゃないみたいな言い方だな」
「日本人であっても、そう思うんじゃない?」
真也は腕を組む。
「まあ、そうか、俺も多いと思ったし」
「でしょ? そんなに神に祈るようなことがあったのかな?」
「昔は未知のものが多かっただろうから、祈らないとやってられなかったんじゃないか?」
「でも、祈ったところで何も変わらない」
結月は淡々と言い放つ。
「う~ん、同感ではあるけど……まあ、自己満足の世界かな」
「自己満足ね……」
彼女は険しい表情を浮かべる。
「っと、こんな議論をしていたら日が暮れる。ルートを決めよう」
結月はうなずくとスマホの画面に目を落とす。
「一先ず、南側から時計回りに行ってみる?」
「うん、そうしよ」
二人は駅前のロータリーから歩き出した。
*
「次で六つ目か」
「うん、次の路地、左ね」
並んで角を曲がる。
「今のところ戦線異常なし?」
「そうだね」
「次のところが一番でかいんだっけか?」
結月がスマホに視線を落とす。
「うん、地図で見た感じではね、突き当りを右ね」
「了解、なんか森みたいのが見える」
彼女は顔を上げる。
「それが公園かも、その中みたいだから」
真也はうなずき、腕時計に目を落とす。
「……あのさ、一回休憩しない? ちょうど、目の前にコンビニもあるし」
「そうだね、私も温かいのが飲みたい」
真也がポケットから財布を出す。
「オッケー、何が飲みたい?」
「いいよ、自分で出すから」
「これくらい大丈夫だぞ」
「そうじゃなくて、私は貸し借り作るのが嫌なの」
結月は強調する。
「別に貸しになんかしないけど」
「これは私の気持ちの問題だから、気にしないで」
真也はうなずく。
「分かった、じゃあ、各々で」
二人がコンビニに向かおうとすると、見慣れたシルエットが目に入る。
「あっ……」
その人物と目が合う。
「あ゛っ」
一時の沈黙。
「勝手な行動はするなと、あれほど――」
「デートです」
結月が真也の腕を抱く。
「! お前らそんな関係だったのか? じゃあ、しょうがな…..そんなわけあるか!」
ゆかりは拳を握りしめる。
「私たちは神社巡りしてただけです」
「こんな場所でか? 昨日の今日で、それが通じるとでも思ってんのか?」
ゆかりは結月に肉薄する。
しばらくにらみ合って、ゆかりはため息を吐く。
「まあ、いい。お前ら、ちょっと付き合え」
真也と結月は顔を見合わせた。
*
「“ゆづ”の行動力はあっぱれだが、心臓に悪いから事前に言ってくれ」
三人は、ゆかりが乗ってきた車の中で飲み物をすする。
「俺は?」
「お前はチキンで腰が重いから、こんなことしないだろ」
真也は口を尖らせる。
「ところで、鷲尾さんは何でこんなところに?」
結月が質問する。
「お前らと同じだよ。そもそも、何で彼女の住んでる場所を知ってんだよ?」
ゆかりは眉間を手で押さえる。
「住んでる場所は知らないですけど、出身中学でだいたい分かります」
「じゃあ、この場所にいたのは、たまたま?」
「次に行こうとしてた神社がすぐそこだっただけです。彼女の家、近いんですか?」
ゆかりは一瞬考える素振りをして、小さく息を吐く。
「ああ。家の近くから回ろうと来たところで、お前らと会ったってわけだ。何個か行ったのか?」
「五か所行って、次が六か所目です」
「そんなに回ったのか? おかしなところは?」
「違和感も含めてなかったです」
「そうか……まあ、何事もなくて良かったよ」
彼女は肩をなでおろす。
「もう、この際だ、お前らも一緒に行くか?」
真也と結月はうなずく。
「くれぐれも勝手なことはするな。何か違和感を感じたら、まず、あたしに言え」
ゆかりは念を押す。
「バラけた行動はなし。三人でまとまって動くぞ」
「分かりました」
「よし! じゃあ、行くか」
その掛け声と共に、三人は車を出た。
