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【長編小説】君の闇、光へと通ず ~現代異能探偵青春譚~

【第023話】嵐の予感

「なるほど」

真也は口に手を当てる。

「青柳さんと同じ中学の子から聞いたから、読みとして、そんなに遠くないはず」

横を歩く結月は目を細める。

「可能性はあると思う。好きなこととか、行動に影響しそうだし」

「そうだよね」

「俺たちは情報収集するのが役目だから、それも鷲尾さんに伝えていいと思う。逆に選んじゃいけない気がする」

「分かった。じゃあ、これも伝えてみる」

真也はうなずき、腕時計を確認する。

「間に合いそうだな」

「うん」

二人は少しだけ歩調を速めた。

「確かに、その線はあるかもな」

そう言うと、ゆかりはカップを口へ運ぶ。

「彼女はもともと占い好きだったみたいで、そういう場所に行ったりもあるかなって」

「そうだな。回復を祈ってても、おかしくないか」

「状況的に、占い自体はしないと思う。でも、スピリチュアルなことに惹かれる彼女なら、祈ることもあったかもしれない」

「それで“神社”ってことか」

ゆかりは口に手を当てる。

「構えずにフラッと行けますし」

真也も口をはさむ。

「分かった。その線も調べてみる」

「ありがとうございます」

ゆかりは首を横に振る。

「礼を言うのはこっちだ。引き続き、よろしく頼む」

結月がうなずくと、ゆかりはバックに手をかける。

「っと、すまねぇ。今日はこれで失礼するわ。明日は……後でメッセージ入れとく」

「分かりました」

ゆかりはうなずき、雪峰家のリビングを出ていった。

「さて、準備するか」

真也は立ち上がり、身体を伸ばす。

「ねえねえ」

「ん?」

「明日出かけてみない?」

「……いいけど、どこへ?」

結月がスマホの画面を見せると真也は顔をしかめる。

「おい、大丈夫なのか?」

「大丈夫でしょ? ただ、神社巡りするだけだし」

「う~ん……」

真也は腕を組む。

「土地勘があった方が情報収集もしやすいし、損はないでしょ?」

「確かに……まあ、神社自体に危険があるわけではないか」

「うん、それに行くなら早い方がいい」

彼は顔を上げる。

「分かった、行こう」

「決まりね。じゃあ、明日は10:00に東口改札でいい?」

「オッケー」

結月はスマホをのぞく。

「地図で少し調べとこっかな」

「俺も調べとく。ルートは明日」

結月はうなずく。

「よし! あとはバイトだな」

「そうね」

各々身支度へと向かう。

「ご機嫌麗しゅう、お二人さん」

真也と結月が通用口をくぐると、明がカウンター席から声をかける。

「なんでお前がいるんだよ」

彼は大げさな身振り手振りで訴えかける。

「ふふ、よくぞ聞いた! じいちゃんのお使いで来たら、人目を忍んでIrisへ入ってく二人――」

「分かった、もういい。帰っていいぞ」

真也は掃うように手を振る。

「そりゃあ、ないだろ。コーヒーの一杯でも出してくれよ」

明はそう言いながらカップを口へ運ぶ。
真也は顔をしかめる。

「噂どおりね」

藍は優しく微笑み、大きな封筒を明へと差し出した。

「これを元締めに」

「了解です」

明はその封筒をバックへしまう。

「なあ、Irisへはよく来るのか?」

「ああ、一週間に一回は来るかな。いつもは土曜日の朝だけど」

「お前、そんなことしてたのか」

真也は目を見開く。

「じいちゃんって顔が広いだろ? 町内会の書類とかは俺が届けてるんだ」

「今はメールとかあるだろ?」

明は指を振る。

「チッチッチ、この街もご多忙にもれず高齢化社会なんだ。今後に及んでもアナログ隆盛ってね」

「デジタル化すら、いまだ遠しってことか」

真也は腕を組む。

「まあ、昔からとはいえ、本当に助かってるわ」

「いえいえ、Irisの永久無銭飲食権を与えられてますから!」

「とんでもない権利だな」

彼は眉間にしわを寄せる。

「これぞ人徳ってやつ」

「自分で言うな」

明は何かに気づく。

「ところで、前から気になってたんだけど、なんで、みんな、じいちゃんを元締めとか、統領とかって言うんだろ? ただの本屋の店長なのにさ」

藍がクスッと笑う。

「まあ、愛称みたいなもんね。世話好きで、町内会でも要だし、みんな何かしらで助けてもらってるしね」

「ふ~ん、じいちゃんものほほんとしてるだけじゃないんだな」

「家族の前だとそうなのかもだけど、私たちからすると、とても頼もしい存在よ」

「そっかぁ、なんだか照れるなぁ」

明は頭をかく。

「お前じゃない」

彼はニカッと笑う。

「じゃあ、そろそろ帰るわ。二人とも末永くお幸せに」

そう言うと、忙しなく店を出ていった。

「まったく口をはさめなかった……」

結月がボソッと吐き出す。

「ごめん、悪気はないんだ」

「まあ、いいけどさ、誤解だけは解いといてよね」

「誤解?」

彼女はため息をつく。

「彼、私たちのこと、男女の仲だと思ってるよ」

真也は額に手を当て、天を仰いだ。

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