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【長編小説】君の闇、光へと通ず ~現代異能探偵青春譚~

【第022話】人が背負うもの

「だぁー、こうなっちまったかぁ」

ゆかりは眉間を押さえて、うつむいた。

「あたしも腹くくるしかねぇな」

「私がいると何かまずいんですか?」

結月が切り込む。

「う~ん、まずいわけじゃないんだが……まあ、いろいろあるというか……」

ゆかりの語気は弱くなっていく。

「鷲尾さんは母さんたちから何か聞いてないんですか?」

彼女は目を大きく見開き、身を乗り出す。

「どういうことだ?」

真也と結月は顔を見合わせる。

結月はゆかりへ、立ち聞きの顛末を説明した。

「はぁ、なるほど、なるほど……やられたぁー!」

ゆかりは髪をかき荒らす。

「俺たちはまんまと策略に乗せられたわけですね」

真也が水を差しだすと、ゆかりは一気に飲み干した。

「ふぅ……」

彼女は腕を組み、呼吸を落ち着かせる。

「取り乱して悪かった。改めてになるが、警察庁刑事局異能犯罪対策課の鷲尾だ。よろしく頼む」

「来栖結月です。よろしくお願いします」

結月が応えるとゆかりもうなずく。

「いろいろあるにはあるんだが、お嬢が協力してくれるのは正直助かる」

「……鷲尾さんは私のこと、知ってたんじゃないんですか?」

ゆかりはバツの悪そうな表情を浮かべる。

「う~ん、そうだなぁ……」

彼女はうつむく。

「まあ、想像はつくから大丈夫です」

「ごめんなぁ」

ゆかりは泣き出しそうな声で謝る。

「じゃあ、今日の報告といきますか」

見守っていた真也が切り出した。

「そうだな」

ゆかりも真剣な表情に戻る。
真也と結月はそれぞれの持っている情報をゆかりへ伝えた。

「なるほどな……う~ん」

「彼女は何かの病気だったりとかは?」

ゆかりはしばし考え込んだ。

「お前たちの読み通りだ。彼女は難病を患っている」

「“難病”?」

「ああ、近年になって発見された病気らしく、治療法も確立されてないらしい」

「どんな病気なんですか?」

「力があふれるような感覚が出るんだとか、でも、身体機能は衰弱していくっていう、何だかよく分からない病気なんだ」

「そうですね……」

「まあ、私たちは医療の専門家じゃないから、その議論をしてもしょうがないんだがな」

真也もうなずく。

「彼女は去年の夏頃に発症して、治療を受けつつ日常生活をしていた。だが、10月ごろから一気に悪くなり始めたそうだ」

真也と結月は神妙な表情で聞いている。

「彼女の最近の調子は?」

「良くはなかったんだろうが、小康状態のような感じだったらしい。それで、ホッとしたの束の間、彼女は失踪。両親のことを思うとな……」

しばしの沈黙の後、ゆかりが口を開く。

「これが青柳怜の事情だ。でも、あまり入り込みすぎるなよ。お前たちが気に病むことじゃない」

「分かってます……」

真也は唇をかむ。

「生きてれば誰しもが何かを背負っている。彼女も、お前たちも、あたしもな。彼女の背負ったものが、それだったというだけの話だ」

「病気と失踪の因果関係はあるんですか?」

結月が質問する。

「現状、因果関係は確認されてない。ただ、病気による心境の変化で、行動パターンが変わっていた可能性はある」

「彼女の最近の様子は?」

「両親や主治医から聞いた限りでは、特段変わった様子はなかったそうだ」

結月は口に手を当てる。

「だから、学校に目をつけたんですね」

「その通りだ。さすがに鋭いな」

ゆかりは表情を緩める。

「事実、青柳怜は通学途中に失踪している」

彼女は目を細める。

「彼女の住んでいるエリアから、お前たちの高校に行く生徒は少ないらしくてな。通学途中の彼女の様子は掴めてないんだ。だから、学校内の近しい連中なら、何か知ってるんじゃないかと思ってな」

「なるほど。じゃあ、そのあたりを中心に情報を集めた方がよさそうですね」

「ああ、そうしてもらえると助かる」

「分かりました」

ゆかりもうなずく。

「正直、こいつだけじゃ、心もとないと思ってたのも事実だ」

真也は口を尖らせる。

「別に責めてるわけじゃないぞ。人間には向き不向きがあるって話だ。ここに関しては、お嬢を頼らしてもらうかな」

結月は静かにうなずいた。

「お前も、お嬢から少し学べ。なんで、あたしらとは普通に話せるのに、同級生とはダメなんだよ?」

「う~ん……、なんか、あの純粋なノリについていけないっていうか」

真也は弱々しく答える。

「私は大丈夫なの?」

「うん、なんでか分からないけど、君は大丈夫」

結月は顔をしかめ、拳を握りしめる。

「なんだろ、すごく複雑な気分」

「お前な、もう少し気ぃ利かせられねぇかなぁ」

ゆかりと結月は大きくため息をついた。

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