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【長編小説】君の闇、光へと通ず ~現代異能探偵青春譚~

【第020話】未知の異能

「名前は、青柳怜。お前と同じ学年だな」

「青柳……」

「知ってるか?」

真也は首傾げる。

「お前は何組だ?」

「G組です」

ゆかりは眉間にしわを寄せる。

「彼女はB組らしい。B組と接点はないのか?」

「芸術科目くらいかな? 文系と理系の違いもありますし」

「う~ん、それ以外の合同授業は?」

「体育と選択科目くらいですね」

「じゃあ、他のクラスとあまり接点がない?」

「……自分は部活もしてないですし」

ゆかりは深く息をつく。

「これは、骨が折れそうだな」

「だから、そう言ってるじゃないですか」

「だー、うるせー。それでも、やってもらわにゃ困るんだ」

ゆかりは再びタブレットに目を向ける。

「次は状況だ。失踪届が出されたのは1週間前の1月18日。最初は所轄がメインで対応してたんだが、3日捜査してもまったく足取りに関わる情報が得られなかった」

真也は腕を組み、ゆかりを見つめる。

「何だ?」

「その段階で学校関係者への聞き込みはしなかったんですか?」

ゆかりは顔をしかめる。

「そりゃあ、できるもんならしたかっただろうさ。だが、諸々の大人の事情でできなかったんだ」

彼女は語気を強め、拳を握りしめた。

「それでも、3日捜査してれば、何かしらの証言や痕跡が見つかるもんだ。でも、気配すら見つからない。まるで、“神隠し”のようにな」

真也は眉間にしわを寄せる。

「鷲尾さんたちは何か掴めたんですか?」

ゆかりは目をつぶり、深く息を吐き出す。

「彼女の部屋を調べさせてもらった。したら、彼女の衣類やカバンから異能の残り香が確認されたんだ」

「異能の残り香?」

「ああ。強い異能はな、人間や物に、匂いように残るんだ」

「匂うんですか?」

「あぁ~、匂いというよりは気配って感じだな。他人の異能に近付くと、自分の異能がピリピリする感じがあるだろ? それが物にもあるってことだ」

真也は険しい表情で虚空を見つめる。

「例えばだ」

ゆかりの目が一瞬鋭くなる。

「今、ザワッてする感覚なかったか?」

真也は目を丸くし、うなずく。

「これが、他の異能に対する抵抗反応だ。この感覚を磨いてくと、相手の異能の系統が読めるようになってくる」

「なるほど……。じゃあ、彼女の部屋で感じたのはどんなものだったんですか?」

「……それがよく分からねーんだよ」

ゆかりは一呼吸置き、続ける。

「反応的に、異能なのは間違いないんだが、感じたことがない感覚だった。もう一人いたんだが、そっちも同じでな」

真也は顔をしかめる。

「そんなの、探しようがないじゃないですか?」

ゆかりは目を細める。

「そうでもない。異能をまとってたなら、どこかで異能を浴びたってことだ」

真也は頭をかく。

「それを探れと」

ゆかりは静かにうなずく。

「異能を浴びた状況が分かれば、被害者は追えなくても、犯人は追うことができる」

「でも、どうやって?」

「まずは、学校内をくまなく歩け。それで、自分の異能に反応があるか確かめろ」

真也はうなずく。

「次に、聞き込みをして、被害者の最近の状況や動線を探れ」

「“動線”?」

「人が動いたルートのことだ。要は、彼女が訪れていた場所やそこに行くための道の情報を集めろってこと」

「なるほど」

「おそらく、他の生徒で被害が出てないことを考えると、異能は校内で浴びたものじゃない。校外で、かつ、彼女だけに当てはまる動線があるはずだ」

真也は顎に手を当て、考え込む。

「先入観は敵だが、一応、あたしの考えを伝えておく」

「分かりました」

「他に質問はあるか?」

真也は何かに気づく。

「ちなみに、その異能はどんな感覚だったんですか?」

ゆかりは苦い表情を浮かべる。

「何かが入り込んでくるような感覚だ。もし、その気配を感じたら、すぐにその場から離れろ」

「それで間に合うですか?」

「正直、分からん。だが、異能も万能じゃない。術者の異能に直接触れてない限りは、残り香として残るほどにはならない。つまり、気配の段階で、離れれば影響は少ないってことだ」

真也は神妙な表情でうつむく。
ゆかりが真也の頭をクシャクシャとなでる。

「大丈夫だ。校内の危険度は限定的だ。校外へ出向くときは、あたしも付き添う」

彼女が毅然と伝えると、真也も顔を上げてうなずいた。

「よし! 今日はこんなとこだろう。これからは、毎日、夕方に状況を教えてくれ。何かあれば、すぐに連絡」

「了解です」

「期待してるぞ、少年」

ゆかりはポンッと真也の背中を叩いた。

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