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【長編小説】君の闇、光へと通ず ~現代異能探偵青春譚~

【第041話】欺瞞

「失礼します」

一人の青年が部屋へ入ってくる。

「かけてくれ」

倉田も立って出迎え、着座を促す。
青年は売上や人員配置について淡々と報告した。
倉田も相槌を打ちながら耳を傾ける。

そして、それが落ち着くと倉田が話題を変える。

「宮城、お前は入って何年になる?」

唐突な質問に青年は戸惑う。

「? 十年、いや、十一年ですね」

倉田は穏やかな表情になる。

「……そうか、もうそんなになるのか」

「ええ、それがどうかしたんですか?」

「いや、聞いてみただけだ」

彼は立ち上がり、窓の外を眺める。

「あの頃は十人もいなかったな」

宮城も表情を緩める。

「そうですね。あの時はここまで大きくなるとは思いませんでした」

「だな。お前も含めて、みんなが頑張ってくれたおかげだ」

暫しの沈黙の後、倉田は宮城の方を向き直す。

「会社を宮城、お前に任せたい」

「えっ?」

宮城は顔を上げる。

「俺と副社長、人事部長の三人は退任する」

彼は慌てて立ち上がる。

「退任は三日後、明日の夕方までに新体制の人事をまとめてくれ」

「待ってください。いきなり、そんなことを言われても……」

倉田は宮城の方へ歩み寄る。

「無茶を言ってるのは承知だが、やってもらうしかない。高村と井川にはいつでも退任できるように準備をさせていたから、ほぼ実務への影響はないはずだ」

「いったい、何があったんですか? そんなに急がなくても……」

宮城は食い下がる。

「状況が変わった。俺たちがいると皆に迷惑がかかるかもしれない」

「……倉田さんたちの本業の方ということですか?」

彼が恐る恐る尋ねると倉田は目を見開く。

「気づいてたのか?」

「……薄々ですけど、そうかもしれないと」

倉田は腕を組む。

「ふぅ~、俺たちもまだまだだな」

宮城は倉田の動きを見守っている。

「心配するな。この会社は真っ当で悪事はしていない。それは、帳簿や契約を見てもらえば分かる」

倉田は表情を緩め、両手を開く。

「みんな本気で働いてくれている。それを俺たちの都合で使うのは違うだろ?」

「……何で、そこまで律儀に?」

彼は一呼吸置く。

「俺たちの組は商売が生業で、ボスが人道に厚い人だった……それに、お前がいたからだ」

倉田の独白は、宮城の戸惑いを待ってはくれない。

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