【第034話】帰還
2026/03/21
まぶたの裏に光を感じる。
真也はゆっくりと目を開ける。
「……」
起き上がり、辺りを見回す。
(帰ってこれたんだ)
結月も目を覚ます。
二人の視線が合うと自然と微笑みが生まれる。
彼女もゆっくりと起き上がる。
「帰ってこれた……」
「おかえり」
真也の言葉に結月は静かにうなずく。
「あなたも」
部屋の扉が開く。
「起きた! かおり、起きたよ!」
藍が入口から叫び、二人へと駆け寄る。
「もう! 心配したんだからね!」
「すみません……何とか帰ってこれました」
藍は穏やかに微笑む。
「よく自力で戻ってこれたわよ。どっちのだったの?」
真也が結月の方を見ると彼女はうつむく。
「彼がいてよかったわね」
かおりも部屋に入ってくる。
そして、二人へ駆け寄ると、真也と結月を両腕に抱えて抱きしめる。
「ただいま」
「ええ、おかえりなさい」
その姿を見守っていた藍がかおりの肩をやさしく叩く。
「それにしても、なかなかお熱いわね、お・ふ・た・り・さ・ん」
真也と結月の手は固く握られている。
二人は赤面して、手をはなす。
「二人して倒れてるし、手は握ってるし」
藍はニヤニヤしながら続ける。
「しかも――」
「あー! ストップ!」
真也があわてて静止する。
「?」
「ふふ、しょうがないなぁ」
「はぁぁ~……」
結月が真也の方を見る。
「何かしたの?」
「えっ? あ~、う~んっと……」
彼は目をそらす。
「何か隠してる」
結月はジトッと真也を見つめる。
「……」
「まあ、いいじゃない? 減るものじゃないんだし?」
「どういうことですか?」
藍がクスッと笑う。
「彼ね、あなたを抱きしめて倒れてたのよ」
結月は一瞬、目を見開くと、真也をにらむ。
「どういうこと?」
「……俺も必死だったんだ」
彼は固く目を閉じ弁明すると藍が助け舟を出す。
「つまり、この子はあなたの心界へ自分で飛び込んでいったのよ」
「えっ?」
真也はそっぽを向く。
「今度はちゃんと守れたみたいね、ナイトさん?」
彼は黙ったままだ。
かおりが静かに息を吐き、手をたたく。
「まずは、診察させて」
「ごめん、そうだったわね」
かおりがうなずく。
「結月ちゃんから見るから、二人は一旦外して」
真也もだまって立ち上がり、扉へと向かう。
「あのさ……ありがとう」
真也は結月の方を向くと穏やかな表情でうなずいた。
*
その日の夕方。
「まあ、無事でなによりだ」
ゆかりが真也と結月と対面する。
「ご心配をおかけしました」
結月の謝罪にゆかりは首を振る。
「別に責めてるわけじゃない。どうしようもないことだしな」
ゆかりは腕を組み、二人を交互に見る。
「……どうかしたんですか?」
「いや、よく乗り切ったな」
真也と結月は顔を見合わせる。
ゆかりはしばらく思案し、表情を引き締める。
「実は、事件捜査で進展があってな、これから姉御たちに報告するんだが、お前らも聞くか?」
二人はうなずく。
「分かった。じゃあ、リビングに来てくれ。そこで、まとめて話す」
部屋を出ていくゆかりを、真也と結月は神妙な面持ちで見送った。
