アルファエイトスタジオのテーマ

Novels

【長編小説】君の闇、光へと通ず ~現代異能探偵青春譚~

【第033話】真実の光

「なんだかムラがなくなってきた。心地良いっていうか」

真也が問いかけると結月は胸に手を当てる。

「そうかも。ザワザワする感じもないし」

それを証明するかのように、彼女の足取りには迷いがない。

「コツが分かってきたかも」

彼が小さく微笑みうなずくと結月が何かに気づく。

「あのさ、奥の方だけど、なんだかぼんやり光ってない?」

「そうだね」

真也と結月のつないだ手も光りだす。

「ねぇ」

彼がつないだ手を持ち上げる。

「光ってる……」

二人は顔を見合わせる。

「これって?」

結月は不安そうな表情を浮かべる。

「行ってみよう。少なくとも嫌な感じはしない。大丈夫」

真也の言葉に彼女もうなずく。

「うん。ここまで来れたし、あなたも一緒だし」

結月がつないだ手をもう一方の手で包み込む。
彼も大きくうなずき、同じように手を包む。

「今度は一緒に乗り越えよう」

「うん」

彼女がうなずくと二人は前を向く。
そして、一歩を踏み出し、光の方へと向かっていく。

「ドンドン明るくなっていく」

「真っ暗だったのが嘘みたい」

真也が何かに気づく。

「ねぇ、何かいる」

「ホントだ」

二人は目をこらす。

「……猫?」

「……」

結月が立ち止まる。

「どうしたの?」

「いや、う~ん、えっと……」

彼女は口ごもり、うつむく。
遠くにいる猫は腰を上げ、奥へと歩き出す。

「動き出したよ、追わないと」

「う、うん」

真也が結月の手を引き、猫の後を追う。
周囲が真っ白な光の世界へと変わっていく。

「まるで案内してくれてるみたいだね」

「そう……だね」

猫は立ち止まり腰を下ろす。
真也と結月も追いつき、立ち止まる。

「やっと追いついた」

猫は耳をピクつかせると二人の方を向き座り直した。
彼女の握る手に力が入る。

「君は……」

「ニャア~」

黒猫は真也を見上げ、穏やかな表情であいさつした。

「何で君が彼女の心界に?」

黒猫は首をかしげると結月の方を向く。

「?? ねぇ、どういうこと?」

彼女はしばらくうつむいていたが、意を決するように息を吐き出す。

「……この子は私の分身なの」

「えっ?」

黒猫は毛づくろいを始める。

「私の異能は、たぶん、理想の分身を生み出す能力」

「……」

真也は口をポカンと開けていたが、ハッと何かに気づく。

「じゃあ、まさか?」

結月は静かに微笑む。

「そのまさか」

彼は額に手を当て、立ちつくす。

「……屋上の会話は全部?」

彼女はうなずく。

「まさか、猫を口説いたり、相談したりし始めるとは思わなかったけどね」

結月は苦笑いを浮かべる。
真也は赤面してうつむく。

「最初は、興味本位で見てただけだったけど、あなたとやり取りしてたら楽しくなってきちゃって」

「……」

彼女は優しく微笑むとつないだ手を持ち上げ包み込む。

「だけど、あの時間があったから、あなたが優しくて温かい人だって分かったから」

真也は顔を上げる。

「今日、あなたがくれた言葉やしてくれたことがホントだってことも分かる」

彼も穏やかな表情で結月を見つめる。

「まあ、藍さんに見つかっちゃったけどね」

「……もしかして、突然来なくなっちゃったのは?」

「そっ。藍さんにバイトしない?って言われて、これも猫の時だけど」

「なるほどね。君への不思議な違和感はこれだったのか」

真也は頭をかく。

「猫の方が良かった?」

彼は首を振る。

「猫の姿の君も良かったけど、俺はありのままの君がいいな」

「それは口説いてるの?」

結月は意地悪そうに真也をのぞき込む。
真也は赤面して、目をそらす。

「ごめん、分かってるよ」

彼女が優しくつないだ手を振ると彼も笑顔になる。

「準備はいいかな?」

「うん、いつでも」

二人はしゃがみ込み、黒猫へと手を伸ばす。
二人の手が黒猫に触れると、真也と結月を真っ白な光が包み込んだ。

TOP