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【長編小説】君の闇、光へと通ず ~現代異能探偵青春譚~

【第028話】守る者の覚悟

「ん……」

「目が覚めたみたいね」

かおりが真也をのぞき込む。

「ここは?」

「Irisよ」

真也は起き上がろうとするが、力が入らない。
かおりが真也を制止する。

「もう少し休んでなさい」

真也は枕に頭を落とす。

「力が入らない」

「気力が抜けきってるからね」

「“気力”?」

「今はいいわ。何か食べたいものある?」

「普通に御飯が食べたい」

「オッケー。ちょっと待ってて」

かおりは処置室を出ていく。

「ふぅ……」

扉が勢いよく開く。
結月が真也に駆け寄る。

「……良かった」

「良かったじゃないよ!」

彼女は真也の胸倉をつかむ。

「死んじゃうかと思ったんだからね!」

結月の目が潤む。

「ごめん……」

「勝手にカッコつけて! これであなたがいなくなったら、私はどうしたらいいの……」

彼女はうつむく。

「……」

結月は手を離すと、部屋を出ていってしまった。
真也は気力を振りしぼって起き上がろうとする。

「怒られちゃった?」

入れ替わるように藍が入ってくる。

「……怒られました。あの――」

「大丈夫よ、今はそっとしときましょ」

真也はベッドに倒れ込む。

「落ち着いたら、お礼言っときなさいよ」

「お礼?」

「君が寝込んでる間、彼女がずっと見ててくれたのよ」

「来栖が?」

藍がうなずく。

「代るって言っても、私が見るって」

「……」

「心配し過ぎて、爆発しちゃったのかも」

「……なんでそこまで?」

彼女は微笑む。

「いなくなっちゃうかもって思ったんじゃないかな」

「どういうことですか?」

藍はしばし考え込む。

「……彼女の家のこと知ってる?」

「いえ」

「そう……」

「何か関係あるんですか?」

彼女は悲し気な表情を浮かべる。

「……結月はね、ある事件によって家族を引き裂かれたの」

「!」

「だからね、怖かったんだと思う」

真也は神妙な表情を浮かべる。

「まあ、それだけでもないだろうけど」

藍は真也の頬を指でつついた。

「異常はなさそうね」

かおりは聴診器を外しながら告げる。

「もう一日二日したら立って歩けるようになるわ」

真也は周囲を見回す。

「母さん、この部屋は?」

「ここは、異能にかかわる医療を行う場所よ」

彼はある装置を見つめる。

「これは、吸い出した気力をため込む装置」

「“吸い出した気力”?」

かおりは装置に手を当てる。

「そう。私の能力はあらゆるエネルギーを吸収する。ただ、そのまま吸ってしまうと、私にも害があるから、吸い出したものをこれにため込んでる」

「そうなんだ……母さんはずっとこういうことを?」

「ええ、異能医療が私の専門よ」

「“異能医療”……そんなものが」

「異能は身体にも精神にも大きく関わっている。だから、医療的なアプローチも必要になるってわけ」

「知らないことだらけだな」

真也は視線を落とす。

「まっ、表には出ないからね」

かおりはパソコンへと向かう。

「あのさ、来栖は?」

「結月ちゃん? う~ん……謝るべきね」

「えっ?」

彼女はしばし考える。

「そうね……真也はよくやったと思う。親としては、女の子を守ったあなたを誇らしく思う。でもね……」

真也は神妙な表情を浮かべる。

「彼女の立場からすれば、同じ目線で歩いていたはずのあなたに守られてしまった。自分は守られる側の人間なんだって思ってしまった」

「そんなこと――」

「分かってるわ。そんなつもりはなかったことも。でも、これは理屈じゃないの」

「……」

「もし、これで、あなたが返らぬ存在となったら、結月ちゃんはどう思うか想像できる?」

彼はうつむく。

「守るにしても捨て身はダメ。そんなのでは、守られた側も、命は助かっても、心に深い傷を負ってしまう」

かおりは真也の手を握る。

「真也が、他人を守りたいと思うなら、自分も生き抜く覚悟を持ちなさい。そして、正々堂々と守れるように、その術を身につけなさい」

真也はしばらくして顔を上げる。

「……分かった」

かおりも彼の表情を見て、うなずく。

「よろしい」

「歩けるようになったら、ちゃんと謝ってくる」

「うん、そうしなさい」

彼女は優しく微笑んだ。

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