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【長編小説】君の闇、光へと通ず ~現代異能探偵青春譚~

【第027話】変わりゆく日常

ゆかりが処置室の扉をノックするが、返事はない。

「入るぞ」

真也が横たわるベッドの横に、結月が座っている。

「ゆづ……」

結月がゆかりの方を向く。

「あまり、気にしすぎるなよ」

結月の反応はない。

「別に死んだわけじゃねぇし、その内、目を覚ます」

彼女はうつむく。

「……私が行ってみようなんて言うから――」

「そうじゃない、そうじゃねぇぞ、ゆづ」

ゆかりは結月の肩に手を当てる。

「こいつのことだ、行く前からそんなことは覚悟決めてたと思うぞ」

結月が顔を上げる。

「真也は良くも悪くも慎重派だと思う。チキンで腰が重いとバカにはしたが、それはリスクを考えられるからこそだ」

「……」

「だからこそ、異能の気配を感じた瞬間にお前を遠ざけたんだ。いざって時に、そうしようと決めてたんだと思う」

彼女の目が潤む。

「普段は頼りねぇくせに男見せやがって」

ゆかりは微笑み、結月の頭をなでる。

「だから、そんな落ち込んでやるな」

ゆかりは結月を抱きしめた。

「そう……」

藍は小さく息を吐く。

「さっき、“統領”から連絡が来た」

かおりも静かに息を吐く。

「また、始まるのね」

「……まだ断定はできないけど」

藍が何かに気づく。

「まさか、哲が駆り出されたのも?」

「そうかもしれない」

かおりはうつむく。

「だったらなおさら、二人を守らないとね」

「ああ、それに、ある意味チャンスかもしれない」

「チャンス?」

彼女は腕を組む。

「私たちにも、あの子たちにも、時間ができた。合法的にね」

「なるほど」

藍は口に手を当てる。

「どの道、目途が付くまで、私たちはここを出ることができない」

「確かに、鍛えるにはもってこいかもね」

「あの子たちも、本質的な異能の脅威を認識したはずだ」

「そうね。鉄は熱いうちに叩けというし」

「ただ、真也も目覚めてないし、結月ちゃんにも時間は必要だろう。数日休ませて、二人にも話そうと思う」

「オッケー」

カウンター奥の扉が開く。

「姉御、容器回収したから、戻るわ」

ゆかりは鍵をかおりへ手渡す。

「保護特例の話は?」

「ゆづにはさっきした」

「なんか言ってた?」

「分かったって」

かおりと藍は神妙な表情を浮かべる。

「あと、ゆづん家に説明に行ってくる」

藍がエプロンを取る。

「私も行くわ、久々に顔も見せたいし」

「助かるぜ、藍の姉御」

かおりは立ち上がる。

「真也は、私が見ておくから、三人で行ってきて」

藍とゆかりはうなずく。

「はぁ~、正直、署に戻りたくねぇ……」

ゆかりはうなだれる。

「大丈夫でしょ? あの人は哲と動いてるんでしょ?」

「そうだけど……」

藍がゆかりの背中をポンと叩く。

「元締めも言ってくれてるだろうし、私もこの後、連絡しとくわ」

「恩に着る、姉御ぉ」

かおりは小さくため息をつく。

「さすがに、理解してくれると思うけどね」

ゆかりは手を横に振る。

「いやいや、娘のことになると空気変わるからな」

かおりと藍は苦笑いを浮かべる。

「まあ、徹底しているという点では私たち以上かも」

「だろ? ゆづが実は異能を発現してたとか口が裂けても言えない」

「隠し通せるとも思わないけどね」

「それでもだ!」

「はいはい、大丈夫よ。その時は私が何とかするから。あなたは目の前のことをやりなさい」

かおりはそっとゆかりの頭をなでた。

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