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【長編小説】君の闇、光へと通ず ~現代異能探偵青春譚~

【第026話】見えない恐怖

結月がゆかりへ駆け寄る。

「間一髪だな」

「……いったい何が」

「話はあとだ、こいつを早くなんとかしねぇと」

ゆかりは立ち上がり、真也を背負う。

「ゆづ、かおりの姉御に連絡できるか?」

結月はうなずく。

「“至急Irisへ、緊急処置”だと伝えてくれ」

「姉御、あいつは?」

部屋を出てきたかおりにゆかりが問いかける。

「命に別状無し。あとは、あの子次第ね」

「はぁ~そうか……すまねぇ、あたしが付いていながら」

かおりは首を横に振る。

「あなたが機転をきかせてくれたから、あの子は助かった。本当にありがとう」

彼女はゆかりを抱きしめ、頭を撫でた。

「ゆづは?」

「真也に付いててくれてる」

「そうか」

「気に病まないでほしいけど……」

かおりは心配そうに部屋の扉を見つめる。

「……」

「それはそうと、現場の方は?」

「所轄の方で神社は封鎖、異能対の方で調査を進めてる」

「そう」

彼女が歩き出すとゆかりもそれに続く。

「真也くんは?」

リビングまでくると藍が問いかける。

「大丈夫よ。しばらくお世話になるかもだけど」

藍は静かに息を吐き出す。

「心配ないわ。さっ、二人ともかけて、一息つきましょう」

「やっぱりか」

ゆかりは腕を組む。

「ええ、真也から抽出した“気力”には、得体の知れないものが含まれてた」

「吸い出せたのか?」

かおりはうなずく。

「姉御はどう感じた?」

「確かに、精神を浸食されるような感覚があった。そして、“陰”でも“陽”でもない」

彼女は険しい表情を浮かべる。

「陰陽区分ができないってことあんのか?」

「ないはずよ。少なくともこれまでは」

「新しい区分ってことか?」

「分からない。複雑に混じってる可能性もある」

かおりは口に手を当てる。

「そもそも、陰陽を混ぜるなんてできんのか? 性質が正反対だろう?」

「できないことはないと思う。二系統持ちだと、二つの性質を合わせることもできるじゃない?」

「確かに」

「ただ、一人の人間が持てる陰陽区分はどちらかだけ。二系統持ちでも両方持つことは不可能だ」

彼女の眼光が鋭くなる。

「ってことはだ、今回のは自然由来ではないってことか?」

「断定はできないけど、人為的に生み出された可能性はある」

「はぁ、これは大事になりそうだな」

ゆかりは額に手を当て、うつむく。

「サンプル、預かってもいいか?」

「ええ、装置の容器ごと持って行ってちょうだい。“理院”にも出すでしょ?」

かおりはゆかりへ鍵を渡す。

「そうだな、助かる」

ゆかりの携帯が鳴る。

「はい、鷲尾です……ええ……ええ……分かりました。こちらもサンプルを回収し次第、戻ります。はい、失礼します」

彼女は電話を切る。

「なんだって?」

ゆかりは小さく息を吐き出す。

「神社の地中から謎の装置が発見された」

かおりもため息をつく。

「どうやら、最悪のケースになりそうね」

「ああ。……たぶん、二人は保護特例になっちまう」

ゆかりは申し訳なさそうにつぶやく。

「心配ないわ。私と藍が付けば問題ないでしょ?」

彼女は顔を上げる。

「特級と一級なら十分過ぎる」

「今日から対応するから、二人にも説明していい?」

「すまねぇ、よろしく頼む。情報は追って連絡する」

かおりがうなずくとゆかりは処置室へと向かっていった。

「いったい奴らは何をしようというの」

かおりの言葉は静寂な空間へと吸い込まれていった。

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